
2026.03.24

3月の終わり、文具店のノート売り場は少し混む。
革の表紙の手帳。
罫線の整ったノート。
書き心地のいいペン。
年度の終わりが近づく頃、
文具店の棚には新しい道具が並ぶ。
真新しい紙を開くと、
最初のページには丁寧な文字が並ぶ。
罫線に沿った予定。
少し整えた字。
いつもより真面目な書き方。
ノートの最初のページほど、
文字はきれいになる。
その丁寧さには、
いつも短い期限がある。
書き終えたあと、
ページを少し眺めてから閉じる人もいる。
その几帳面さは、まだ数日続く。

やがてノートは毎日開かれなくなる。
最初は数日。
次は一週間。
気づくと、ページは途中で止まっている。
最初のページはきれいなままだ。
後ろのページは、ほとんど白い。
ときどき思い出したように開かれて、
短いメモが一行だけ残ることもある。
春になると、文具店の棚にはまた新しいノートが並ぶ。
書かれていないページが、
ノートの奥にそのまま続いている。

ノートより、
キーボードに触れている時間の方が長い日もある。
キーボードを打ち続けていると、指先が少し乾く。
紙に触れていなくても、
皮膚は静かに摩擦を受けている。
茶ノ実油を1滴、指先になじませる。
指の腹で広げると、
皮膚が少し落ち着く。
机の上のノートには、
まだ白いページが残っている。
ページは途中で止まっていても、
手は今日も同じように動いている。

机の上に残った白いページは、
書かれなかった日の記録です。
それでも手は、
今日も同じように動いています。
そのことだけは、
確かに残っています。