
2026.05.12

花を選ぶ人もいる。
言葉を送る人もいる。
普段は言わないことも、
なぜか言葉になることがある。
でも父への感謝は、気づけば言葉にならないまま過ぎていくことが多い。
忘れていたわけではない。
関係が悪いわけでもない。
ただ、何を言えばいいのかが少し分からない。

父が何をしていたのか。
正確には、あまり思い出せない。
毎日働いていたことも、
そこに居たことも、
当たり前になりすぎていた。
人は、思い出せる感謝から先に言葉にする。
強く残ったことほど、言葉になりやすい。
ずっと続いているものには、輪郭がない。
気づけばそこにあって、
問題もなく、
静かなまま続いている。
安定しているものほど、人の意識から外れていく。

問題がある関係には、言葉が生まれる。
気を遣ったり、埋めようとしたり、何かを確かめようとする。
でも、何も問題が起きていない関係は、静かなまま続いていく。
何も言わない。
何も渡さない。
それでも、洗面台に置かれたSea Salt Soapだけは、今日も少しずつ形を変えていく。
静かに続いているものほど、気づかれにくい。

人は、失ったものより、
ずっと続いているものを思い出せない。
そこにあることが前提になったものほど、
改めて言葉にする理由を失っていく。
感謝がないわけではない。
ただ、静かに続いているものは、
気づかないまま言葉の外へ置かれていくように思います。