
2026.05.26

5月の後半になると、
人は少しだけ静かなものを探し始める。
派手な場所より、曇り空。
強い言葉より、湿度のある音楽。
まだ壊れているわけではない。
でも身体より先に、
感情の方が”冷たいもの”を欲しがり始める。
春は、ずっと明るかった。
新生活。
始まり。
新しい人間関係。
ちゃんとしようとする空気が、
街の中にずっと流れていた。
人はそれに合わせながら、
少しずつ熱を持っていく。
ちゃんとできたかどうか、
まだわからないまま。
だから5月の後半になると、
静かなものに安心し始める。

紫陽花の写真が増える。
雨の音を流し始める。
少し暗い部屋の写真を保存している。
人は、元気になりたいわけではない。
“これ以上、熱を持ちたくない”に近い。
壊れていないのに、
温度を下げようとしている。

人が保存しているものも少し変わる。
楽しそうな場所より、
落ち着きそうな部屋。
刺激の強い言葉より、
音の少ない映像。
強い香りより、
ラベンダーの香り。
人は疲れると、
“強いもの”ではなく、
静かになれるものを近くに置き始める。

夜になる頃には、
少しだけ熱を下げるようなものを選びたくなる日がある。
音を消して、
明かりを落として。
それだけで少し、温度が下がる気がする夜がある。